家族会への再バッシングは杞憂だろうか?

横田めぐみさんの夫とされる金英男氏が横田夫妻に宛てて,4年前に訪朝を促す手紙を出していたという.以下,産経webの記事,元記事は東亜日報らしいが,その日本語版WEBに未だ記事はなかった.

韓国紙、東亜日報は17日、拉致被害者横田めぐみさんの両親、滋さんと早紀江さんの話として、めぐみさんの「元夫」とされる「キム・チョルジュン」氏が4年前に横田夫妻に自筆の手紙を送り、訪朝を要請していたと報じた。
 横田夫妻は同紙とのインタビューで、訪朝して墓などを訪問すれば、めぐみさんの死亡が既成事実化される危険性があるため要請に応じなかったと明らかにした。
 平成14年に訪朝した日本政府調査団は、同氏からの手紙を持ち帰ったことを発表していた。
 手紙には「めぐみと私は結婚して間もなく娘が生まれました。幸福な結婚生活でしたが、今はめぐみが死亡したという知らせを伝えるしかなく遺憾です。娘のヘギョンがまだ幼く、日本へ行くのは難しく、お2人が北へおいでになれば、いろいろなお話をしたいと思います」と書かれていたという。
 また、早紀江さんは同紙に対し、日本政府のDNA鑑定でめぐみさんの夫の可能性が高まった韓国人拉致被害者、金英男氏の母親が夫妻と会いたいとしていることについて「私たちは親類になるわけで一刻も早く会いたい。子どもたちの幼いときの話を交わしながら慰労したい」と述べた。
 横田夫妻は手紙を金英男氏の家族に見せて筆跡が同氏のものかどうか確認したいとした。
 早紀江さんは「めぐみが北朝鮮の人と結婚していれば日本に帰ってこられないのではないかと心配していた。相手が韓国人なので少し気分が楽になった」と語ったという。
(共同)(04/17 12:48)


これを見ると,北朝鮮はかなり初期の段階から娘さんのヘギョンさんだけでなく,夫まで使って拉致事件のシンボルである横田めぐみさんを利用しようと企んでいたことが分かる.4年前,フジテレビがヘギョンさんを使った北の工作にまんまと乗せられてしまったわけだが,横田夫妻は敏感にそれを察知して,情を断ち切ってまでもそれに乗ることはなかった.したがって,あの時点で本当の夫がどうかも分からない男の口車などに騙されることはなかったのは当然だろう.
しかしながら,今はその男が本当の夫で,しかも拉致された韓国人であることがほぼ明らかになっているわけだから,現状はちょっと複雑である.



というのも,DNAの鑑定結果報道が出て以来,連日のように当のめぐみさんそっちのけで,韓国好きな?メディアが金氏の家族報道をしていることだ.
西村幸祐氏も”酔夢ing Voice”で以下のように気にしておられたが,金氏の家族(母親や義姉)が北朝鮮への批判をしないことが今の韓国を如実に顕している.

韓国で行われた金英男さんのご家族の記者会見で気になったことがある。英男さんの母親と姉が一度も北朝鮮を非難する言葉を発しないことだ。韓国政府への要望は口にするが、拉致というテロの当事者である北朝鮮を非難する言葉はなかった。それは、現在の韓国社会の空気を見事に象徴する出来事だった。


メディアに流れるものが家族の生の声を100%,反映しているとは限らないし,これを切っ掛けに韓国々内でも拉致事件がクローズアップされてきたようなので,情勢は肯定的に捉えたいとは思う.日韓双方が拉致という極悪犯罪を共通認識の元,取り組めるようになれば喜ばしいことだ.
だが,韓国政府の姿勢がどこまで北朝鮮に対して,否定的になれるのか,その太陽政策を鑑みればやはり心配になる.おそらく今後,流れは北の提案により,日韓双方の家族が訪朝して,涙の対面を演出する方向になっていくのではないかと思う.韓国がそれをアシスト・アレンジする可能性は高いのではないか?,これが実現すると,めぐみさん死亡が既成事実化されてしまう.これは北が当初から目論んでいたことなので,DNA鑑定報道が拉致問題を逆に大きく後退させてしまうことに成りかねない.
勿論,横田夫妻や家族会等はこういった北の手口を誰よりも熟知しておられるので,安易に乗ることは考えられないが・・・,恐いのは世論とそれを煽るメディアである.
そこで,第2回訪朝時の家族会バッシングである.あれは果たして偶然だったのか?,故意に演出されたものだったのか?,筆者には分からない.ただ,あの時,小泉総理は訪朝前にブルーリボンバッジをまるで決意の表明かのように胸に付けたにも拘わらず,「取り返した」ではなく,「返していただいた」結果に終わってしまったことだ.それが,あの記者会見に繋がったわけだ.筆者は,小泉総理が家族会の面々から強い批判を受けることを予想して,わざと結果報告を公開したとの懸念がどうしても拭い去れない.
したがって今回,現実に上記のような対応を迫られた場合,果たして横田夫妻や家族会がそれをはねつけ,代わりの方策に転換を図ることが出来るだろうか非常に心配だ.今度は前回と異なり,不自然なほどに親韓なマスメディアも韓国側の提案に,より一層迎合してくる可能性も高い.
北を追い詰めるためのDNA鑑定報道が,逆に北に有利な展開にもっていかれることだけは避けねばならない.目的は北の家族に会うことなんかではなく,奪還することにあることを忘れてはならない.


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