そりゃないでしょ 黄先生
胚(はい)性幹細胞(ES細胞)づくりに関する研究や米科学誌の論文をソウル大調査委員会から全面的に捏造(ねつぞう)と断定された黄禹錫(ファン・ウソク)・同大教授は12日午前、ソウル市内で記者会見し、「虚偽データ使用の全責任は私にある。すべて認める」と、論文が捏造されたものであったことを認め、謝罪した。しかし、核心部分のデータについて「協力病院の研究員らに全面的に任せ、報告だけ受けていた。結果的にそれが虚偽だったことになる」と述べ、自身は捏造の意図がなかったことを強調した。
黄教授は、実験用の卵子提供者との間に金銭の授受があったことも認めた。また、ES細胞のクローン技術そのものに調査委が疑問を呈したことに対し、技術の確立は可能だと主張した。
黄教授が公に姿を見せたのは、同大調査委が05年論文について捏造と中間報告した先月23日以来。この日の記者会見には内外から300人以上の報道陣が参加し、会見の模様はテレビで生中継された。
一方、ソウル中央地検は12日、論文捏造問題の強制捜査に踏み切り、ソウル大の黄教授の研究室や自宅、協力関係にあった病院など26カ所を一斉に家宅捜索した。検察当局は、同大の調査委員会が「一部研究データがコンピューターから削除されていた」との疑惑を提起したため、証拠保全を急いだとしている。韓国メディアは、捜査の対象が論文に関与した11人に絞られたとしている。
全責任は私にあると述べながら共同研究者に責任があるかのように釈明するとは,もう研究者以前の問題です.
例えば,捏造対象のサイエンスに掲載された論文(Patient-Specific Embryonic Stem Cells Derived from Human SCNT Blastocysts., Hwang, et al. Science, 308. 1777-1783 (2005))の欄外には To whom correspondence should be addressed. E-mail: hwangws@XXX.XX.XX (W.S.H.) とあるんですが,これは明らかに黄教授のメルアドですよね?
ということは黄先生は明らかにコレスポンディング・オーサー(責任著者).しかも,ファースト・オーサー(筆頭著者)でもあるわけですから,彼は公には何も言い訳できる立場にない.共同研究者が何をやろうと,それを認めた立場としては全くの同罪です.
日本でも,大阪大学の医学研究科で同じような捏造論文(ネーチャー・メディシン)がありましたが,こちらもコレスポンディング・オーサーである指導教授の責任を問われていたことは記憶に新しい(筆頭著者は学生だった).
生命科学分野は脚光を浴びてますから目立つっていうのもあるんでしょうが,功を焦るあまり,やってはいけないことをしてしまうことに関してはどの業界の人も(勿論自分を含めて)自戒しなくてはなりません.